研究内容

臨床研究

帝王切開術中の低血圧予防に対するesCCOを指標とした循環管理の有効性の検討

はじめに

1.臨床試験について

九州大学病院では最新の治療を患者さんに提供するために、病気の特性を試験し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の有効性や安全性の検討等を行うことを一般に「臨床試験」と言います。この臨床試験は、九州大学病院臨床試験倫理審査委員会で審議された上で、病院長の許可を受けて実施されます。

2.麻酔中の循環モニターについて

帝王切開を受けられる患者の麻酔中の循環動態のモニターは心拍数や血圧、尿量などでおこないます。その中でも血圧の値が最も重要な指標となります。一般的に血圧測定は5分毎に計測し、平均血圧が65mmHg以下であれば昇圧薬の投与や輸液の投与量を増加させたり致します。

3.麻酔中の低血圧予防方法について

血圧のモニターは観血的なものと非観血的なものとに分類されます。通常腕にカフを巻いて計測する方法が非観血的方法です。一方観血的方法は手首の動脈にカテーテルを挿入し血圧を持続的に計測する方法です。もちろん観血的方法のほうが持続的に観察できるため、低血圧に対する治療を早く行えるため、心機能が悪い方、大量出血が予測される患者へは大変有効になります。しかしながら、動脈へ直接カテーテルを挿入する侵襲性より利益が大きい場合に限ります。今回検討するesCCOは非侵襲的であり、装着するだけで低血圧の出現が予測できる新しいモニターです。しかし、これまでの標準的治療法と直接比較した臨床試験が行われていないため、どちらの治療法が本当に優れているのかは明らかではありません。

対象

福岡バースクリニックで手術を受けられる患者さんで、硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔下に手術を行われる方、200名を対象とさせていただく予定です。

研究デザイン

〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重
麻酔記録より(輸液バランス、循環作動薬の量、血圧の推移, 昇圧薬の量、輸液の量、麻酔薬投与量、基礎疾患、内服薬、胎児体重、麻酔時間、新生児のアプガースコア、pH)
 
 本試験では、同意いただいた患者さんを、ランダム(無作為)に2つの治療法(従来どおり非侵襲性血圧測定による血圧を指標にして治療を開始する群と、esCCOを指標として低血圧の出現を予測し、治療を開始する群)に割付けし、実際の低血圧の時間を比較検討します。計画では、それぞれの群で100名ずつの患者様が登録される予定となっています。どちらかのグループに割付けられますが、これはコンピューターによって行われ、あなたも担当医もどちらのグループに割付けられるのかは選択できません。つまりあなたは同じ確率でどちらかのグループに割付けられます。
 

研究内容

測定結果と取得した情報の関係性を分析し、esCCOを指標とした循環管理が低血圧出現予防へ及ぼす効果を明らかにします。

個人情報の管理について

この臨床試験の結果は、学会発表や論文での報告などに使用しますが、あなたご自身のプライバシーに関する秘密は全て厳守します。氏名などの個人を特定する情報は、報告に当たって一切使用しません。本試験で得られた情報は、「九州大学 人体から取得された試料及び情報等の保管に関する標準業務手順書」に従って、
少なくとも試験終了後5年間厳重に保管の上、適正に廃棄いたします。なお、この臨床試験が正しく行われていて秘密が守られることを前提として、モニタリングや監査、倫理審査委員会関係者などが、必要な範囲内で、この試験に参加していただいている皆さまの 試料・情報を閲覧する場合があります。 
本試験で得られた情報は、「九州大学 人体から取得された試料及び情報等の保管に関する標準業務手順書」に従って厳重に保管いたします。本試験で得られたデータを別の試験に2次利用する場合は、改めてその試験計画を倫理審査委員会において審査し、承認を受けた上で利用します。この場合も、あなたの実名を出すようなことは一切ありません。あなたの病状や名前などに関する情報を含めプライバシーは厳重に守ります。なお、この臨床試験が正しく行われていて秘密が守られることを前提として、モニタリングや監査、倫理審査委員会関係者などが、必要な範囲内で、この試験に参加していただいている皆さまの 試料・情報を閲覧する場合があります。
個人情報管理者はバースクリニック院長北条哲史と九州大学大学院 麻酔・蘇生学
分野 教授 山浦 健とし、情報は九州大学麻酔科とバースクリニックとで共有する。

研究期間

今回の研究の実施にあたっては、九州大学病院臨床試験倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和5年3月31日までです。

医学上の貢献

この試験の目的は、新しい非侵襲血行動態パラメータであるesCCOを指標とした循環管理が低血圧出現を予防できるかを解明することです。従来どおり非侵襲性血圧測定器により血圧をモニターし、治療を開始する群と比較し、esCCOを指標する低血圧の出現を予測モニターを使用することにより、低血圧の出現を減少できるか検討します。本研究を行うことで、術中の循環管理に有益だと考えます。

研究機関

バースクリニック(データ保管、データ割付、データ取得)
九州大学(データ解析)

連絡先

電話:092-883-0530  福岡バースクリニック医局
E-mail:keny@kuaccm.med.kyushu-u.ac.jp

試験責任者:         
福岡バースクリニック 医長 湯元 康夫(データ保存・管理)

試験実施担当者:       
福岡バースクリニック 院長 北条 哲史(データ割付)
九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野 教授 山浦 健(データ取得)
九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野 准教授 東 みどり子(データ取得)
九州大学病院 麻酔科蘇生科 講師 白水 和宏(データ解析)
九州大学病院 麻酔科蘇生科 助教 住江 誠(データ保存モニタリング)

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