患者さんへ

ペインクリニック

ペインクリニックとは、ペイン=痛み・クリニック=診療、つまり、痛みの治療を専門に行う診療科です。

「必要な痛み」と「不必要な痛み」について

まず、痛みは必要かどうか考えてみましょう。例えば、けがをした時に痛みを感じます。しかし、この痛みによって、自分の体がさらに傷つく事を避けるように行動します。このような危険を知らせる痛みは、体を守るために「必要な痛み」と言えます。

一方、「手術後、外傷後の神経損傷」や「頸椎症や腰部脊柱管狭窄症による神経の圧迫」、「帯状疱疹後」などで痛みが続いてしまう事があります。このような痛みは、「不必要な痛み」であり、痛みそのものが病気とも言えます。

痛みだけでも治療は必要か

前述の「不必要な痛み」は「長く辛い痛み」となる事があります。なぜなら、痛みを放置する事で、「痛みを伝える機能」や「痛みを抑える機能」が機能不全を起こし、元に戻らなくなり、さらに痛みが強くなることがあるからです。痛みの治療は、発症からなるべく早く始めることが大切です。

痛みがある事で、外出できない、仕事に集中できない、人に理解されずに辛いなど様々な問題を抱える事があります。このようなストレスを抱えて生活する事は、体にも心にも負担になる事でしょう。少しでも生活の質を改善させるために、積極的に痛みの治療を行いましょう。

当院ペインクリニックでの治療対象疾患

全身 癌性疼痛 帯状疱疹 帯状疱疹後神経痛 脳卒中後の痛み など
頭部・顔面 片頭痛 群発頭痛 筋緊張性頭痛 三叉神経痛 舌咽神経痛 非定型顔面 など
頸肩上肢 頸椎症 頸椎捻挫(むち打ち症)胸郭出口症候群 肩関節周囲炎 など
胸腹部 肋間神経痛 尿管結石 慢性膵炎 など
腰下肢 腰痛症 腰部脊柱管狭窄症 腰椎椎間板ヘルニア 坐骨神経痛 骨粗しょう症 など
血流障害 閉塞性動脈症 バージャー病 など
その他 多汗症、顔面けいれん など

ペインクリニックで行う治療

主な治療法は、神経ブロック治療(注射)と薬物治療です。診察、血液検査、画像検査を行った後に最善の治療法を選択し患者様と話し合いながら治療を行います。神経ブロックで効果が一時的である場合は、手術療法を選択することもあります。

神経ブロック治療について

神経ブロック治療(注射)は、単に神経を麻痺させて一時的に痛みを改善させるだけではなく、神経の腫れ(神経の炎症)を抑え、血流をよくする事で、痛みを改善させる治療です。痛みが続いてしまうと、自律神経がうまく調整できなくなることがあります。このような場合、局所の緊張から血液の流れが悪くなり、痛みを起こす物質が蓄積されてしまいます。これを放置すると、ますます血液が流れにくくなり、さらに痛みが増幅します。これを痛みの悪循環と言います。この悪循環を断ち切るために交感神経(自律神経)や知覚神経(痛みなどの感覚神経)の神経ブロック治療を行います。また、部位によっては、高周波熱凝固法や神経破壊薬などを使用し、長期に痛みを改善させる事も可能です。ブロック注射には、様々な方法があり、それぞれの疾患によって適応が変わります。

当院で行なっている主な神経ブロック治療

高周波熱凝固法、パルス高周波法について

高周波熱凝固法は、神経ブロック治療を行う際、その針先より高周波電流を発生させ、その熱によって神経が蛋白変性を起こし、痛みが伝わらないようにする方法です。この方法により数か月から数年の除痛効果をもたらします。神経破壊薬であるアルコールなどを使用する場合は薬液が周囲の組織に広がり副作用が現れる可能性がありますが、高周波熱凝固法では周囲組織を破壊することがないため安全性が高いと言えます。特に三叉神経痛や椎間関節症などに適応があります。手足の神経には動きが抑制されてしまうため高周波熱凝固法は使用できません。

一方、パルス高周波法は運動神経に影響を与えずに痛みの神経に効果をもたらします。高周波電流を間歇的に流すことにより針先端を42℃以下に保ち、熱による神経の損傷はきたしません。その機序は不明な点もありますが、知覚神経が選択的に影響を受けて除痛効果を表すと考えられています。一般的に高周波熱凝固法よりも効果を示す期間が短いですが、手足の神経にも施行が可能です。

神経ブロック治療の方法はその他にも多数ありますので、ペインクリニックを受診した際にお気軽に御相談ください。

薬物治療について

前述の痛みを「痛みを伝える機能」を抑制し、「痛みを抑える機能」を最大限に引き出すお薬を処方します。これは、どのような原因で痛みが起こっているかを十分検討した上で処方されます。

手術による治療

脊髄刺激装置植え込み術

脊髄硬膜外腔に細いリードを挿入し、その先端から非常に微弱な電気を流すことにより、痛みを緩和させる治療法です。神経の痛みに効果を示します。この脊髄刺激療法は痛みの原因を除去する治療ではないので、完全に痛みがなくなるというより、痛みを和らげることを目的とした治療法です。半数以上の患者さんで痛みが和らぎ、運動機能が改善しますので、日常生活の質の向上や、リハビリの推進に役立ちます。まずは、トライアルで試すことができ、効果が確認できた場合に本植え込みを行います。

下記の疾患で適応がありますが、効果が期待できる疾患であっても長い間経過した痛みに対しては効果が低いと考えられています。また、心理社会的な要因から生じる痛みには、脊髄刺激療法は効きません。

  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 脊椎手術後の痛み
  • 帯状疱疹後神経痛
  • 断端痛・幻肢痛
  • 末梢血流障害(閉塞性動脈硬化症 バージャー病 レイノー症候群)
  • パーキンソン病による腰下肢痛
  • など
経皮的髄核摘出術
腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛や坐骨神経痛などに対して行います。腰椎椎間板ヘルニアは薬物治療や神経ブロックなどの保存的治療を基本とします。しかし、保存治療で効果が不十分で痛みが長引いている場合は、椎間板内を減圧する方法(本治療)を行います。手術の前に血液、腰椎MRIや椎間板内造影の検査を行い、椎間板の状態を事前に確かめます。(検査結果によっては整形外科での手術をお勧めする場合があります。)本治療では椎間板内に細い管を挿入し椎間板内部の髄核を少量摘出します。椎間板ヘルニアに対する手術の中では最も侵襲の低い手術の一つです。本治療後は6週間程度、椎間板に負担をかけないように過ごしていただきます。
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