研究内容

臨床研究

脊柱側弯症手術時の6%HES製剤使用が術後腎機能へ与える影響の検討

はじめに

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在脊柱側弯症の患者さんを対象として、手術時の6%HES製剤使用が術後腎機能へ与える影響に関する「観察研究」を行っています。6%はこの輸液製剤に占めるHES(Hydoxyethyl starch)、つまりデンプンの含有量を示しています。これらデンプンは生体内の酵素により分解されます。HESはデンプンから製造された人工膠質液製剤であり、細胞外液製剤と比較して血管内に比較的長期に留まることが明らかとなっています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。

対象

九州大学病院麻酔科蘇生科において2013年1月1日から2022年3月31日までに脊柱側弯症の診断で脊柱側弯症手術を受けられた方のうち、手術施行時における年齢が満20歳未満の患者100名を対象にします。

研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究デザイン

この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。測定結果と取得した情報の関係性を分析し、脊柱側弯症手術中に使用する第3世代のHESの術後腎機能に及ぼす影響を明らかにします。
 
 〔取得する情報〕

  • 研究対象者背景
年齢、性別、身長、体重、現病歴、既往歴、定期内服薬、術式、血液検査(クレアチニン、Hb、血小板)、貯血量
  • 手術情報
手術時間、麻酔時間、出血量、尿量、輸液量、輸血量、血圧
  • 術後情報
血液検査(クレアチニン、Hb、血小板、PT、APTT、フィブリノゲン)、出血量、尿量、輸液量、輸血量
 
 

研究内容

輸液製剤は大きく、晶質液と膠質液とに分類されます。膠質液はその血管内停滞作用により血管内容量増加作用により循環動態の安定を目的に投与されます。現在多くの病院で使用されている膠質液は2013年に日本で臨床使用が開始され、第3世代のHES(Hydoxyethyl starch)として、従来の第二世代のHESと比較して、多くの研究で安全性の向上が証明されています。安全に使用できる投与可能量も体重1kgあたり20mlから50mlへとも大幅に増加されていることからもその安全性が伺えます。年齢の制限はなく、小児においても一般的に使用されています。一方、腎不全、頭蓋内出血の患者への投与は第二世代同様に、使用禁忌となっています。よって腎機能への影響に関して、使用開始以来、多くの施設で検討がなされています。第3世代のHESに関しては術後の腎機能の悪化が見込まれる症例に対しても、悪影響を及ぼすことなく、安全に使用できることが多くの検討で証明されています。しかしながら、小児おいて、術中使用した第3世代のHESと術後腎機能を検討した報告は少ないのが現状です。今回対象にした、脊柱側弯症手術は10代での手術が多く、出血量が多いため、HESを比較的多く術中に投与されるのが特徴です。そこで、今回麻酔科蘇生科では、脊柱側弯症手術中に使用する第3世代のHESの術後腎機能に及ぼす影響を検討することを目的として、本研究を計画しました。本研究を行うことで、さらなる安全性が確立されます。

個人情報の管理について

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

試料や情報の保管等について

情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は部局等運営経費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究機関

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院麻酔科蘇生科
九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野
研究責任者 九州大学病院麻酔科蘇生科 講師 白水和宏
研究分担者 九州大学病院麻酔科蘇生科 医員 安藤太一
九州大学病院麻酔科蘇生科 医員 岩崎哲也

連絡先

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学病院麻酔科蘇生科 講師 白水和宏
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線5714)
    〔FAX〕092-642-5722
メールアドレス:ijkseimsei@jimu.kyushu-u.ac.jp

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