研究内容

臨床研究

術後経静脈的自己調節鎮痛法(IV-PCA)の効果と有害事象の検討

観察研究について

 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在手術後に経静脈的自己調節鎮痛法を受けられた患者さんを対象として、経静脈的自己調節鎮痛法の効果と有害事象(副作用)に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027年3月31日までです。

研究の目的や意義について

 経静脈的自己調節鎮痛法(IV-PCA)は、主に手術後の痛みを和らげるために使用されている鎮痛方法で、点滴から小さな機械に入った鎮痛薬を持続的に投与し、患者さんが痛みを感じたときに機械のボタンを押すことで追加の鎮痛薬を投与できる方法です。強力な鎮痛薬を用いるため、鎮痛効果も強いですが、副作用(嘔気嘔吐、呼吸抑制、掻痒感など)が出現することも少なくないため、当院では術後に麻酔科医が回診を行って投与量を調整しています。
 長年一般的に使用されている方法ですが、どの手術後にIV-PCAを使用すべきか、またどの程度の鎮痛薬を投与すべきかについては一定の見解はなく、場合によっては鎮痛効果よりも副作用の方が問題になることがあります。
そこで、今回麻酔科蘇生科では、IV-PCAの使用状況(術式、投与量)と効果、副作用の現状を調査し、副作用発生の危険因子を明らかにすることを目的として、本研究を計画しました。本研究を行うことで、今後のIV-PCAの適応および投与量を設定するうえで有用な情報が得られると考えられます。
ホームページで本研究の実施について公表し、本研究への苦情や問い合わせ、参加取り消しの申し出等ができるようにすることによって、改めてインフォームド・コンセントを頂くことに替えさせて頂きます。

研究の対象者について

 九州大学病院手術部において2018年4月1日から2022年5月31日までに手術を受けられた方のうち、術後に経静脈的自己調節鎮痛法を使用された500名を対象にします。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
 
 

研究の方法について

 この研究を行う際は、診療録および麻酔記録より以下の情報を取得します。後ろ向きに取得したデータを分析し、術後経静脈的自己調節鎮痛法の使用状況、鎮痛効果と有害事象(副作用)の現状について調査を行い、有害事象発生に関与する因子を明らかにします。

 〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重、診断名、術式、併存疾患(高血圧、糖尿病、腎疾患、心血管疾患等)、既往歴、服用薬、喫煙習慣、飲酒習慣、ASA-PS、手術時間、麻酔時間、出血量、輸液量、輸血量、尿量、麻酔方法、術中フェンタニル使用量、IV-PCAフェンタニル流量、制吐薬使用、追加鎮痛薬使用、周術期合併症、入院期間
周術期血液検査結果(へモグロビン、白血球数、血小板数、アルブミン、CRP等)

 この研究を行うことで患者様に日常診療以外の余分な負担が生じることはありません。

個人情報の管理について

 研究対象者の診療録と麻酔記録の情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

試料や情報の保管等について

〔情報について〕
 この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野の寄附金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報の開示について

 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制について

 この研究は以下の体制で実施します。
・研究実施場所
九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野
九州大学病院 麻酔科蘇生科・手術部

・研究責任者
九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野 教授 山浦 健

・研究分担者
九州大学病院手術部 助教 浅田 雅子
九州大学病院 手術部 助教 田口 祥子
九州大学病院 手術部 助教 冨永 昌周
九州大学病院 手術部 助教 佐々木 翔一
九州大学大学院医学系学府 大学院生 高森 信乃介

相談窓口について

 この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学病院 手術部 助教 浅田 雅子
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線3312)
    〔FAX〕092-642-5712
メールアドレス:asada.masako.105@m.kyushu-u.ac.jp

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