研究内容

臨床研究

医療機器の違いによるヘモグロビン濃度測定値の比較検討

はじめに

手術中の輸液による血液の希釈や手術操作による出血により周術期の患者様は貧血となることがあり、麻酔科医は患者様の全身状態を考慮し輸血をするかどうか判断しております。貧血の指標として血液中で酸素と結合して全身に酸素を運搬するヘモグロビンがありますが、九州大学病院手術室では血中へモブロビン濃度を血液中の血球数を測定する全自動血球計算器(MEK-6240, 日本光電)、血液の状態を調べる血液ガス分析装置(ABL835, RadiometerとStat Profile® pHOx® Ultra, Nova Biomedical)、微量の血液(0.01ml)からヘモグロビン濃度を測定可能なポイントオブケア(POC)機器(HemoCue Hb 801)、血液中の酸素の割合を測定する経皮動脈血酸素飽和度測定装置(Radical-7®, Masimo)の4機種で測定可能で、術中はこれらの検査結果をもとに輸血製剤の使用を判断していますが、検査方法の違いにより測定値にズレが生じます。
Masimo社のRadical-7®は周術期の全患者様で使用するパルスオキシメータのひとつで、体内の酸素の割合を測定する医療機器です。さらにRadical-7®の特徴として、指に専用のセンサーを装着することで非侵襲的・連続的に経皮的トータルヘモグロビン濃度(SpHb)を測定可能な事があります。通常、ヘモグロビン濃度は採血をすることでしか測定できませんが、Radical-7®はセンサーを装着するという非侵襲的な方法で測定可能であり、患者様の採血の負担を軽減し、医療従事者の血液暴露による感染のリスクも回避できます。また全自動血球計算器や血液ガス分析装置では時間をおいて定期的にしかヘモグロビン濃度を測定できませんが、SpHbは連続的に測定でき、その臨床使用は術中の不適切な輸血製剤の使用を回避できる事が示唆されています。
しかしRadical-7®や血液ガス分析装置は血液に数波長の光を当てることでトータルヘモグロビン濃度を測定するため、体温や血液サンプルの温度、血液の濃さなどの影響を受けるとされています。Radical-7®もこれらの因子に影響を受けることは想定されていますが、実際にこれらを調べた報告はあまり多くはありません。そこで本研究では、Radical-7®を術中にモニタリングする患者様で、全自動血球計算器(MEK-6240)、血液ガス分析装置(ABL835とStat Profile® pHOx® Ultra)、POC機器(HemoCue Hb 801)、Radical-7®によりヘモグロビン濃度を測定・比較し、測定結果に影響を与える因子を検討することを目的としています。

対象

九州大学病院麻酔科蘇生科の医師が手術の際の全身麻酔管理をする患者様で、Masimo社のRadical-7®を使用する50名を対象とさせていただく予定です。

研究内容

この研究への参加に同意いただきましたら、カルテより以下の情報を取得します。また、全身麻酔管理に伴う採血の結果を解析に用いますので、今回の研究用に追加で採血をすることはありません。
 〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重、BMI、原疾患、術式、術前の血算・生化学検査などの採血結果を診療録より、また手術室内の生体モニタリングデータ(心拍数、血圧、酸素飽和度、体温、脈波変動指数、灌流指標、経皮的に測定したトータルヘモグロビン濃度)および血液ガス分析装置・自動血球計算器の測定値、薬剤・輸血・輸液投与量を麻酔記録より抽出致します。
上記より得られたデータを用い医療機器によるヘモグロビン濃度測定値の違いを検討し、測定値の差に影響を与えた因子を検討します。

個人情報の管理について

あなたのカルテや麻酔記録より取得した情報をこの研究に使用する際には、あなたのお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。あなたと研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、あなたが特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究期間

今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2028年1月31日までです

連絡先

担当者:九州大学病院  麻酔科蘇生科  助教  﨑村正太郎
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線2403)
    〔FAX〕092-642-5715
メールアドレス:masuika@med.kyushu-u.ac.jp

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