研究内容

臨床研究

血液透析患者に対する全身麻酔下経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)中の循環動態変動に関する検討

観察研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、血液透析を受けている患者さんの全身麻酔下経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)中の循環動態変動に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027年3月31日までです。

研究の目的や意義について

重症大動脈弁狭窄症の標準的治療は外科手術による大動脈弁置換術ですが、超高齢の患者さんや胸部を切開して行う開心術のリスクが高い患者さんでは適応となりませんでした。そのような手術が難しい患者さんに対して人工心肺を用いずに行える経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)が新たに開発され、2013年10月より本邦で保険償還となり、さらに、2021年4月より慢性血液透析を行なっている患者さんに対しても適応が拡大されました。当院は現在全国で約30施設のみに限られる血液透析患者に対するTAVI実施認定施設です。TAVIを受ける患者さんは、全身麻酔による血圧低下や不整脈等の循環変動が大きく非常に繊細な麻酔管理を要します。さらに血液透析を受けている患者さんでは全身の動脈硬化や自律神経障害、シャントの存在による拡張期血圧の低下などによって全身麻酔による循環変動は大きくなると考えられます。慢性透析患者さんに対する全身麻酔下TAVIを施行している施設は全国でも限られており、麻酔による循環変動に関して調査を行うことは、今後高齢化によってさらに症例数が増加すると考えられるTAVIのより良い麻酔法を考えていくために有用であると考えられます。
ホームページで本研究の実施について公表し、本研究への苦情や問い合わせ、参加取り消しの申し出等ができるようにすることによって、改めてインフォームド・コンセントを頂くことに替えさせて頂きます。

研究の対象者について

九州大学病院手術部において2021年4月1日から2022年12月31日までに全身麻酔下に経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を受けた患者さんを対象とします。透析患者20名、非透析患者50名の患者さんを対象とする予定としています。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
 

研究の方法について

この研究を行う際は、診療録および麻酔記録より以下の情報を取得します。後ろ向きに取得したデータを分析し、透析患者さんと非透析患者さんにおける麻酔中の循環作動薬の使用状況、周術期合併症、有害事象発生の危険因子について調査を行います。
 〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重、診断名、術式、術前検査所見(心電図、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、血液検査)、併存疾患(高血圧、糖尿病、腎疾患、維持透析導入の有無、冠動脈疾患、心臓弁膜症、不整脈、房室ブロック、永久ペースメーカー挿入の有無)、既往歴、服用薬、喫煙習慣、飲酒習慣、ASA-PS、手術時間、麻酔時間、出血量、輸液量、輸血量、尿量、麻酔方法、心血管作動薬使用量、有害事象、周術期合併症、挿管時間、ICU入室期間、入院期間。
 この研究を行うことで患者様に日常診療以外の余分な負担が生じることはありません。

個人情報の取扱いについて

研究対象者の診療録と麻酔記録の情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

試料や情報の保管等について

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野の寄附金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野
九州大学病院 麻酔科蘇生科・手術部
研究責任者 九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野 教授 山浦 健
研究分担者 九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学 助教 水田 幸恵
九州大学病院 集中治療部 助教 大澤 さやか
九州大学病院 手術部 助教 安藤 太一
九州大学病院 集中治療部 助教 髙橋 慶多
九州大学病院 麻酔科蘇生科 医員 中野 良太

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学 助教 水田 幸恵
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線7995)
    〔FAX〕092-642-5712
メールアドレス:mizuta.yukie.330@m.kyushu-u.ac..jp

BACK
研究内容
基礎研究
臨床研究
業績
共同研究