研究内容

臨床研究

手術中のオンダンセトロン投与が食事摂取へ与える影響の検討

はじめに

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在乳腺外科・腹腔鏡下婦人科手術を受けられた患者さんを対象として、手術時のオンダンセトロン使用が術後食事摂取量へ与える影響に関する「観察研究」を行っています。オンダンセトロンは制吐薬であり、古くから臨床の現場で使用されている薬剤です。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。

対象

九州大学病院麻酔科蘇生科において2017年1月1日から2023年6月30日までに乳腺外科・腹腔鏡下婦人科手術を受けられた方のうち、手術施行時における年齢が満20歳以上の患者1400名を対象にします。

研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究デザイン

この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。測定結果と取得した情報の関係性を分析し、乳腺外科・腹腔鏡下婦人科手術中に使用するオンダンセトロンの術後食事摂取量に及ぼす影響を明らかにします。
 
 〔取得する情報〕※研究計画書に記載の項目と統一すること
情報:

  • 研究対象者背景
年齢、性別、身長、体重、現病歴、既往歴、定期内服薬、術式、乗り物酔いの有無、喫煙歴、術前食事摂取量
  • 手術情報
手術時間、麻酔時間、出血量、尿量、輸液量、輸血量、術後NRS、オンダンセトロン・メトクロプラミド・デキサート投与の有無、麻薬投与量
  • 術後情報
食事摂取量、術後NRS、メトクロプラミド投与の有無
 

研究の目的や意義について

術後の安全性向上, 術後合併症減少, 入院期間短縮および経費節減を目指す管理方法が近年求められています。特に、手術後24時間以内の早期の飲水, 食事, 離床を促進することが重要とされています。具体的には①術後早期に飲み始めることができる、②食べ始めることができる、③動き始めることができる、の3項目です。 これらの達成を阻害する因子として, 術後悪心嘔吐(PONV)、疼痛, 術式, 不動, 消化管機能不全等が関係すると報告されていますが、麻酔科医は主に術後痛管理、 PONV対策, オピオイド投与量において関与しています。
周術期のPONV対策として, これまではメトクロプラミド, ドロペリドールといった薬剤を主に使用していましたが、2021年8月30日よりオンダンセトロンが本邦で術後の消化器症状に対して保険適応となりました。オンダンセトロンのPONVに対する有効性は、今まで多数報告されており、術後患者の予後改善のために大きく貢献すると思われます。
しかしながら、オンダンセトロンの術後早期の食事摂取量に及ぼす影響を検討した報告はほとんどありません。今回, 乳腺外科・腹腔鏡下婦人科手術症例において, オンダンセトロンはPONV発生率を軽減させ, 術後早期の十分な食事摂取に寄与するという仮説を立て, 後ろ向きに検討した. 主要検討項目として, オンダンセトロンが食事摂取量に与える影響, 副次的検討項目として, オンダンセトロンがPONV発生率に与える影響、オンダンセトロンとステロイドかつプロポフォール使用でもPONVを生じた症例を対象に、PONVが生じたタイミングとその危険因子の検討をします。

個人情報の管理について

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

試料や情報の保管等について

情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は講座寄付金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究機関

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院麻酔科蘇生科
九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野
研究責任者 九州大学病院手術部 准教授 白水和宏
研究分担者 九州大学病院麻酔科蘇生科 医員 村上智子
九州大学大学院医学系学府 麻酔・蘇生学分野 大学院生 髙森信乃介

連絡先

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学病院手術部 准教授 白水和宏
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線5714)
    〔FAX〕092-642-5722
メールアドレス:ijkseimsei@jimu.kyushu-u.ac.jp

研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

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