研究内容

臨床研究

妊婦に対する脊髄くも膜下麻酔後嘔気発症に関連する血行動態パラメータの検討

はじめに

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在帝王切開術を受けられた患者さんを対象として、脊髄くも膜下麻酔後の気分不良時の血行動態パラメータを検討し、循環モニターとして、どれがより臨床症状と相関するか検討する「観察研究」を行っています。今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2024年3月31日までです。

研究の目的や意義について

手術時、血圧値や心拍数、心電図、脈波などを血行動態の基本的なモニターとして計測しています。通常の帝王切開時も同様で、これら以上の体に侵襲的なモニタリングを行うことは少ないです。帝王切開の麻酔は基本的に脊髄くも膜下麻酔で鎮痛を図り、鎮静薬を使用することなく覚醒下に手術をおこないます。帝王切開時の麻酔の特徴として、脊髄くも膜下麻酔後の子宮による下大静脈の圧排、それに伴う静脈還流量低下による血圧低下を臨床上よく観察します。その際、一回拍出量を補うために心拍数は上昇します。以上より、帝王切開時の脊髄くも膜下麻酔後は、血圧低下、心拍数上昇、一回拍出量低下、末梢血管抵抗低下となることが知られています。
一方、臨床上では、帝王切開時の脊髄くも膜下麻酔後に患者が気分不良になるのをよく観察します。しかしながら、それが血圧低下によるものなのか、心拍出量の低下によるものなのか、議論のあるとこです。長い間、心拍出量は侵襲的なモニターでしか計測できませんでしたが、近年、無侵襲で計測できるデバイスが臨床使用されており、当院でも使用しています。しかしながら、今まで、帝王切開時の脊髄くも膜下麻酔後の気分不良発生時の血行動態パラメータを検討した研究はありません。本研究はそれらを検討することにより、信頼できる循環モニタリングを特定し、それを元にすることにより、少しでも多く気分不良を未然に防ぐために行います

研究デザイン

この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。測定結果と取得した情報の関係性を分析し、帝王切開時の脊髄くも膜下麻酔後の気分不良がどの血行動態パラメータと相関し、予測できるものか検討します。
 
 〔取得する情報〕

  • 研究対象者背景
年齢、性別、身長、体重、現病歴、既往歴、定期内服薬、術式
  • 麻酔情報
麻酔時間、出血量、尿量、輸液量、麻酔後無痛範囲、麻薬投与量、血圧値、簡易的心拍出量計から得られるパラメータ、心拍数
 

研究の対象者について

九州大学病院麻酔科蘇生科において2023年5月15日から2023年8月25日までに帝王切開手術を受けられた方のうち、手術施行時における年齢が満20歳以上の患者60名を対象にします。

研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

個人情報の管理について

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

試料や情報の保管等について 

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は講座寄付金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院麻酔科蘇生科
九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野
研究責任者 九州大学病院手術部 准教授 白水和宏
研究分担者 九州大学病院手術部・助教 安藤太一
九州大学病院麻酔科蘇生科・臨床講師 﨑村正太郎

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学病院手術部 准教授 白水和宏
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線5714)
    〔FAX〕092-642-5722
メールアドレス:ijkseimsei@jimu.kyushu-u.ac.jp

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業績
共同研究