研究内容

臨床研究

脊髄クモ膜下麻酔が非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)に与える影響

1.観察研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在、脊髄クモ膜下麻酔を受けられた患者さんを対象として、脊髄くも膜下麻酔前後の非侵襲連続推定心拍出量(estimated continuous cardiac output: esCCO)と血行動態パラメータとの関係を検討し、循環モニターとして、どれがより臨床症状と相関するか検討する「観察研究」を行っています。今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2025年3月31日までです。

2.研究の目的や意義について

手術・麻酔時の循環モニタリングは心電図、血圧を基本としますが、その基本にあるのが心拍出量です。重症患者さんでは心拍出量を測定することが一般的になっており、これを肺動脈カテーテルや動脈圧波形などにより測定しますが、これらは侵襲的でありすべての患者にもちいることはできません。近年、非侵襲な方法として開発された非侵襲連続推定心拍出量(estimated continuous cardiac output: esCCO)はパスルオキシメータセンサーと血圧計、心電図という麻酔中の標準モニタリングから推定できるため、全ての麻酔中の患者さんに使用可能となって、広く臨床使用されています。しかし、これまで全身麻酔中の循環モニタリングとして有用であることが報告されていますが、脊髄クモ膜下麻酔(下半身麻酔)中の変化についての報告は少なく、評価は明らかではありません。特に脊髄クモ膜下麻酔は急激な循環変化が生じ、低血圧の頻度が高いために、心拍出量測定は低血圧予防のために特に重要となります。本研究は手術のために脊髄クモ膜下麻酔を受けた患者において、測定した非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)に影響を与える因子について検討します。これにより、この非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)を適切に使用し、低血圧などの合併症を減らせる可能性があります。

3.研究の対象者について

福岡バースクリニックにおいて2020年5月1日から2022年4月30日まで、九州大学病院麻酔科蘇生科おいて2023年1月1日から2023年9月30日までに、脊髄クモ膜下麻酔を受けられた方のうち、手術施行時における年齢が満18歳以上の患者さんで、非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)を測定した約400名を対象にします。そのうち九州大学では約200名、福岡バースクリニックでは約200名の患者さんが対象です。
 
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

4.研究の方法について

この研究を行う際は、カルテ、麻酔記録、生体情報モニタリングデータより以下の情報を取得します。福岡バースクリニックから情報を収集する際は、情報を収集し、個人情報が特定できないように加工IDを配布したのち、研究者が九州大学病院に持参し、解析作業をおこないます。測定結果と取得した情報の関係性を分析し、脊髄くも膜下麻酔前後の非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)の変化がどの血行動態パラメータと関係しているか検討します。

 〔取得する情報〕
情報:
① 研究対象者背景
年齢、性別、身長、体重、現病歴、既往歴、定期内服薬、術式
② 麻酔情報
麻酔薬の種類、投与量、麻酔時間、麻酔後無痛範囲、
呼吸数、体温、脈拍数、血圧、非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)、脈波伝播時間
出血量、尿量、輸液量、血管作動薬の投与量

5.個人情報の取扱いについて

研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

6.試料や情報の保管等について

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

7.利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は部局等運営経費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

8.研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

9.研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院麻酔科蘇生科
九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野
研究責任者 九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 准教授 東 みどり子
研究分担者 九州大学病院手術部・助教 安藤太一
九州大学病院手術部・准教授 白水和宏
共同研究機関等 機関名 / 研究責任者の職・氏名 役割
福岡バースクリニック・医長・湯元康夫(院長 北條哲史) 情報の収集

10.相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 准教授 東 みどり子
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線5714)
    〔FAX〕092-642-5722
メールアドレス:higashi.midoriko.976@m.kyushu-u.ac.jp

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