研究内容

臨床研究

体外式連続心拍出量測定用センサーの違いによる術中低血圧発生頻度への影響

1.観察研究について

 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在、全身麻酔管理を必要とする患者さんを対象として、体外式連続心拍出量測定用センサーの違いによる術中低血圧発生頻度の比較検討に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2024年12月31日までです。

2.研究の目的や意義について

 手術中の低血圧が術後の腎機能や心臓の細胞に悪影響を与える危険因子となることが近年報告されており、麻酔科医にとって血圧管理を含めた周術期循環管理の重要性は以前よりも増しています。そのため患者の全身状態や生体への影響が大きい術式などを考慮し、手首の橈骨動脈に細い針を穿刺して直接血圧を測定し、さらには心臓の機能や血管の緊張度(中心静脈圧測定時)が測定可能な体外式連続心拍出量測定用センサー(Flo Trac Sensor, Edwards Lifesciences, 米国)を用いることで、周術期の循環管理を行なっています。今回、低血圧を予測する機能(HPI:Hypotension Prediction Index)を有するセンサー(Acumen IQ Sensor, Edwards Lifesciences, 米国)が臨床使用可能となりました。このHPIは10分以内に低血圧が発生することを警告するため、循環動態への早期治療介入が可能となり、術中低血圧を減少させることが報告されています。
 今回本邦でも臨床使用可能となったことから、従来の方法と比較してこのセンサーが術中低血圧の発生を予防することができるかを検証致します。

3.研究の対象者について

 2023年1月1日から2023年5月31日までの期間に九州大学病院手術室で体外式連続心拍出量測定用センサーを使用して循環管理を行なった全身麻酔管理患者30症例を対象としております。
 
 研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。
 

4.研究の方法について

 この研究を行う際は、診療録より以下の情報を取得します。取得した情報の関係性を分析し、FloTrac Sensor使用群とAcumen IQ Sensor使用群で低血圧発生状況を比較し、また昇圧薬使用量や輸液量などの循環管理方法に差がみられるか検証します。
〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重、BMI、原疾患、術式、術前の検査結果、術後経過を診療録より、また手術室内の生体モニタリングデータ(心拍数、血圧、酸素飽和度、体温、心拍出量、一回拍出量、全身血管抵抗、収縮期勾配、動的動脈エラスタンス、HPI)、検査結果、薬剤・輸血・輸液投与量

5.個人情報の取扱いについて

 研究対象者のカルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学病院麻酔科蘇生科のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した情報は、九州大学大学院 医学研究院 外科学講座 麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

6.試料や情報の保管等について

 この研究において得られたあなたのカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

7.利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は部局等運営経費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

8.研究に関する情報の開示について

 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、どうぞお申し出ください。
 この研究に関する情報や研究成果等は、以下のホームページで公開します。
 九州大学麻酔科蘇生科ホームページ:https://www.kuaccm.med.kyushu-u.ac.jp
 また、この研究では、学会等への発表や論文の投稿により、研究成果の公表を行う予定です。

9.研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院 麻酔科蘇生科
        九州大学病院 手術部
研究責任者 九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 教授 山浦 健
研究分担者 九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 准教授 東 みどり子
九州大学病院 手術部 准教授 白水 和宏
九州大学病院  麻酔科蘇生科  診療講師  﨑村正太郎

10.相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学病院  麻酔科蘇生科  診療講師  﨑村正太郎
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線2403)
    〔FAX〕092-642-5715
メールアドレス:masuika@med.kyushu-u.ac.jp

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