研究内容

臨床研究

人工心肺を使用する心臓手術中の近赤外分光法(NIRS)による脳組織酸素飽和度(rSO2)値の 軽微な変動と術後痙攣・脳血管障害の関連に関する検討

1.臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、人工心肺を使用する心臓手術中の近赤外分光法(NIRS)による脳組織酸素飽和度(rSO2)値の軽微な変動と術後痙攣・脳血管障害の関連に関する「観察研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2028年3月31日までです。

2.研究の目的や意義について

人工心肺を使用する心臓手術では、手術中に、低血圧、脳への血流の減少、空気塞栓、脂肪塞栓、大動脈解離などが起こることによって、しばしば術後に脳梗塞、脳出血、痙攣などの脳血管障害が引き起こされる可能性があります。麻酔科医は、手術中に心臓手術を受ける患者さんの額の部分に近赤外分光法(NIRS)を使用した脳組織酸素飽和度(rSO2)値モニターを装着し、手術中に脳に酸素が十分届いているかどうかを常に観察しており、異常がある際には迅速に診断、治療ができるように監視しています。しかし、NIRSモニターは、頭蓋骨の厚みや脳以外の血流の影響も受けるため、指先で測定し、97%以下で異常値と判断される動脈血酸素飽和度(SpO2)(パルスオキシメーター)などとは異なり、NIRSモニターの測定値自体には信頼性はなく、測定値が基準値から20%以上低下または50%以下となると、脳の酸素や血流が低下している可能性が考えられるという程度にとどまります。心臓手術の術後に脳梗塞、脳出血、痙攣などの脳血管障害が起こる患者さんは3.1%程度ですが、脳血管障害が起こると、死亡や意識障害、麻痺などの重大な後遺症を残すこともあるため、手術中に早期発見し、早期の対処、治療に結びつけることができる方法の開発が必要であると考えます。今まで、rSO2値で異常値であると判断されなかった値の微細な変化や移り変わりと、術後の痙攣や脳血管障害の関連に関して調査を行うことは、今後、人工心肺を使用する心臓手術で脳血管障害を予防、早期治療する上で有用であると考えます。
ホームページで本研究の実施について公表し、本研究への苦情や問い合わせ、参加取り消しの申し出等ができるようにすることによって、改めてインフォームド・コンセントを頂くことに替えさせて頂きます。

3.研究の対象者について

九州大学病院において2022年9月1日から2023年8月31日に人工心肺を使用する心臓手術を受けられた患者さん300名を対象とします。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

4.研究の方法について

この研究を行う際は、診療録および麻酔記録より以下の情報を取得します。後ろ向きに取得したデータを分析し、手術後に痙攣や脳血管障害が見られた患者さんと見られなかった患者さんにおける手術中の脳組織酸素飽和度(rSO2)値の変化と、術中脳波、瞳孔径、手術後の脳梗塞、脳出血、痙攣などの神経学的合併症の有無について調査を行います。
 〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重、診断名、術式、術中術後のrSO2値、術中脳波、瞳孔径、神経学的所見、周術期の神経学的合併症。術前検査所見(頭部CT、頭部MRI、頸動脈超音波検査、心電図、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、血液検査)、併存疾患、既往歴、服用薬、ASA-PS、手術時間、麻酔時間、人工心肺時間、出血量、輸液量、輸血量、尿量、麻酔方法、有害事象、挿管時間、ICU入室期間、入院期間。
この研究を行うことで患者様に日常診療以外の余分な負担が生じることはありません。

5.研究への参加を希望されない場合(事前に同意を得ていない資料を用いる研究の場合)

この研究への参加を希望されない方は、下記の相談窓口にご連絡ください。
なお、研究への参加を撤回されても、あなたの診断や治療に不利益になることは全くありません。
その場合は、収集された情報などは廃棄され、取得した情報もそれ以降はこの研究目的で用いられることはありません。ただし、参加を時にすでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。

6.個人情報の取扱いについて

研究対象者の診療録と麻酔記録の情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

7.試料や情報の保管等について

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

8.この研究の費用について

この研究に関する必要な費用は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野の寄附金でまかなわれます。

9. 利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野の寄附金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

10.研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 また、この研究に関する情報や研究成果等は、以下のホームページで公開します。
 九州大学麻酔科蘇生科ホームページ:https://www.kuaccm.med.kyushu-u.ac.jp

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