研究内容

共同研究

糖尿病治療薬SGLT2阻害薬に関連した術後ケトアシドーシスに関する 多施設共同前向き観察研究:SAPKA Study

臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院麻酔科蘇生科では、現在全身麻酔下に手術を受けられる患者さんで、糖尿病と診断されSGLT2阻害薬を服用されている方を対象として、術後ケトアシドーシスに関する「臨床研究」を行っています。

今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和6年12月31日までです。

研究の目的や意義について

SGLT2阻害薬は、日本では糖尿病治療に使用されている内服薬です。世界的に使用量が増えている薬ですが、副作用としてケトアシドーシスという状態をおこすことがあります。ケトアシドーシスになると血液が酸性になり、発見・治療が遅れると死亡することもある重大な副作用です。SGLT2阻害薬に関連したケトアシドーシスはめったにおこらない (0.1%未満)と考えられていましたが、SGLT2阻害薬を服用している患者さんで、この薬の副作用によると考えられる術後ケトアシドーシスがおきたという報告が最近増えています。症状からは気づかれにくく尿検査や血液検査をしないと診断がつかないため、これまで考えられていたよりも多くおこっている可能性がありますが、その実態は分かっていません。
SGLT2阻害薬を服用している患者さんにおける術後のケトアシドーシスの発生頻度について調べるため、この研究を計画しました。ケトアシドーシスの診断は、術後に行う“尿検査”と、その結果によって必要に応じて行う“血液検査”によって行います。

研究の対象者について研究内容

九州大学病院で全身麻酔下に手術を受けられる患者さんで、糖尿病と診断されSGLT2阻害薬を服用されている方を対象にします。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

この研究への参加に同意いただきましたら、カルテより以下の情報を取得します。また、術後0、1、2、3日目に尿検査を行います。尿検査の結果により、必要に応じて術後最大1回、0.5〜1.0mLの採血をさせていただきます。尿検査と血液検査の結果から、ケトアシドーシスかどうか判断します。測定結果と取得した情報をUMIN医学研究支援 (症例登録割付) システムクラウド版 (UMIN-INDICE cloud) 上の電子ケースレポートフォームに入力し、詳しい解析を行う予定です。解析結果から、SGLT2阻害薬に関連した術後ケトアシドーシスの発生頻度を明らかにします。

〔取得する情報〕
1)背景情報
生年月日、性別、喫煙歴、病歴、服用している薬についてお聞きしたりカルテから情報を収集したりします。
2)身体所見
身長、体重をカルテで調べます。
3)手術、麻酔に関連した情報
診断名、術式、手術時間、手術から退院までの日数、麻酔法、麻酔時間、術後に人工呼吸を必要としたかどうか、手術前・手術中にインスリンを使用したかどうか、手術前の絶食期間、SGLT2阻害薬の術前休薬期間、術後の食事およびSGLT2阻害薬の再開日をカルテで調べます。
4)術前検査データ
手術前に行われた血液、尿検査のデータをカルテで調べます。
5)術後検査データ
術後3日間は研究目的で尿を採取します。尿検査でケトン体が陽性だった場合、追加で血液検査を行い以下の項目を検査します。
pH、重炭酸、血糖、ナトリウム、カリウム、塩素

各共同研究施設の研究責任者がUMIN-INDICE上の電子ケースレポートフォームに研究対象者の情報を入力し、解析責任者が電子データにアクセスして詳しい解析を行う予定です。

個人情報の取り扱いについて

研究対象者の血液や測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野・教授・山浦 健の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
研究対象者の測定結果、カルテの情報をUMIN-INDICE上のケースレポートフォームに入力する際には、九州大学にて上記のような処理をした後に行いますので、あなたを特定できる情報が外部に送られることはありません。

試料や情報の保管等について

〔試料について〕
この研究において得られた研究対象者の尿や血液は原則としてこの研究のために使用し、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野教授・山浦 健の責任の下、必要な検査を行い結果を確認した後は、院内の手順に従って適切に廃棄し、長期間の保管は行いません。

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野において同分野教授・山浦 健の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。

また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えております。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。

本研究に関する必要な経費は講座寄付金と杏林大学医学部麻酔科学教室研究費であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。

利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報や個人

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。

研究実施場所(分野名等) 九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野
九州大学病院麻酔科蘇生科
研究責任者 九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 准教授 東 みどり子
研究分担者 九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 助教 住江 誠
九州大学病院麻酔科蘇生科 講師 白水 和宏
九州大学病院麻酔科蘇生科 助教 藤吉 哲宏
九州大学病院麻酔科蘇生科 助教 木村 真実
九州大学病院麻酔科蘇生科 医員 山本 美佐紀
九州大学病院手術部 助教 前田 愛子
九州大学病院手術部 助教 中山 昌子
九州大学病院手術部 助教 松下 克之
九州大学病院手術部 助教 信國 桂子

共同研究施設
及び
試料・情報の
提供のみ行う
施設 施設名 / 研究責任者の職名・氏名 役割
① 杏林大学医学部麻酔科学教室/准教授 関 博志
② 埼玉県立小児医療センター麻酔科/部長 蔵谷 紀文
③ 国際医療福祉大学市川病院麻酔科/教授 志賀 俊哉
④ 東北大学麻酔科/医員 岩崎 夢大
⑤ 慈恵医科大学麻酔科/教授 近藤 一郎
⑥ 札幌医科大学麻酔科/准教授 枝長 充隆
⑦ 日本大学麻酔科/助教 道宗 明
⑧ 浜松医科大学麻酔科/助教 小林 賢輔
⑨ 秋田大学麻酔科/教授 新山 幸俊
⑩ 川崎医科大学麻酔科/准教授 前島 享一郎
⑪ 福岡大学麻酔科/准教授 重松 研二
⑫ 宮崎大学麻酔科/教授 恒吉 勇男
⑬ 弘前大学麻酔科/助教 齋藤 淳一
⑭ 山形大学麻酔科/講師 岡田 真行
⑮ 東京歯科大学市川総合病院麻酔科/助教 伊東 真吾
⑯ 熊本大学麻酔科/特任教授 杉田 道子
⑰ 日本医科大学麻酔科/准教授 石川 真士 解析

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学大学院医学研究院麻酔・蘇生学分野 准教授 東 みどり子
連絡先:〔TEL〕092-642-5714(内線5714)
    〔FAX〕092-642-5722
メールアドレス:higashi.midoriko.976@m.kyushu-u.ac.jp

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