当教室について

ご挨拶

九州大学大学院医学研究院
外科学講座麻酔・蘇生学分野 教授

山浦 健

KEN YAMAURA

麻酔・蘇生学教室は昭和37年に初代古川哲二教授により開講し、吉武潤一二代目教授、髙橋成輔三代目教授、外 須美夫四代目教授により発展してきた教室で、2019年度より山浦が担当させて頂いております。
現在の医療において麻酔・蘇生学の役割は益々大きくなっています。
特に超高齢社会に伴い手術医療の役割はますます増加しています。手術医療はいわゆる“計画された外傷”により治療を行うことが基本です。麻酔の基本はこの“計画された外傷”に対して痛みを取り除くこと、侵襲による生体内の大きな乱れから身を守ることを基本としています。

全身麻酔は神経に作用して痛みを取り除くだけでなく、他の大切な作用も麻痺させてしまいます。このため、麻酔によって本来自分自身で身を守るためにそなえられた様々な機能や、呼吸や循環という命を維持するための基本的な機能も失われてしまい、神経学的には一時的な昏睡状態あるいは脳幹反射能消失に伴い機能的には脳死に近い状態(仮死状態)を作り出します。このため、麻酔科医は患者さんが麻酔で眠っている間も患者さんのそばで片時も離れずに患者さんの代わりに呼吸、循環を整え、危険から身を守る役割を担っています。
麻酔は仮死状態を作り出すため、蘇生が伴います。歴史的には麻酔に伴い気道確保(気管挿管)が一般的になり、循環不全に対して胸骨圧迫を含めた循環補助が始まり、いわゆる心肺蘇生法が始まりました。このため、麻酔を実施する医師は蘇生の専門家でもあります。これから発展したものが集中治療や救急医療の中で応用されています。
麻酔科医が関与する集中治療では、生体の様々な乱れに対して、呼吸・循環・体液代謝などの全身管理を専門として、術後の患者を含めた重症患者管理を行なっています。24時間体制で呼吸不全、重症心不全を含めた循環不全、敗血症など様々な難治性の重症疾患に取り組んでいます。このため、循環不全や敗血症の治療戦略についての基礎研究も行ない治療法の確立に努めています。

痛みを取り除くことを基本とする手術麻酔から、痛みの治療も発展しています。ペインクリニックでは慢性痛に対する痛み、緩和ケアではがんに伴う痛みに対して、痛みを和らげる医療を提供しています。痛みのメカニズムは解っていないことも多く、心療内科やリハビリを取り入れた集学的な診療とともに、難治性の慢性痛の基礎研究も行ない、あらゆる痛みからの解放を目指しています。
現在の高度な手術医療は低侵襲化とともに高度先進技術を必要としますが、一方で危険も伴います。これには多職種の専門家が英知と高度な専門技術を結集して取り組む必要があり、チーム医療が重要です。しかもこの手術医療の基本にあるのは患者安全です。この安全で高度な手術医療の基本であるチーム医療の要として麻酔科医は重要な役割を果たす必要があります。麻酔科医は痛みを取り除くこと、呼吸・循環・体液代謝という全身管理を行うとともに、手術医療の全体を見渡す能力とそれをまとめる社会性、リーダーシップが求められます。このような人材を育成・輩出すべく卒前・卒後教育に取り組んでおります。
 これからも安全で高度な手術医療の提供および痛みからの解放を目標として、臨床・教育・研究に精力的に取り組みことで社会への貢献を果たしていきたいと思っております。

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